毎年、シーズン到来が楽しみな「産直 シャインマスカット」。
生産者一人ひとりが、どうしたらおいしいシャインマスカットができるのかを
考え抜いて生産しています。
種がなく丸ごと食べられ、ひと粒ほおばると甘さとみずみずしさが口の中に広がる「産直 シャインマスカット」。年々人気が上昇しているぶどうです。
長野県北部に位置する産直産地の一つ、JA中野市では550人の生産者がぶどうを生産しています。生産者を訪ねたのは6月6日、露地ではぶどうの小さな蕾がつき、ハウス栽培のものにはすでに袋がかけられて、たくさんのぶどうが育っていました。
ぶどうを育てて23年目、JA中野市ぶどう部会の生産者、下田貴之さん。家業だった農業を始めたのは23歳のときです。
「私たちは5人でぶどうを栽培していて、現在はその8割がシャインマスカットです。この品種が誕生した15年ほど前から栽培しています。中野市は、暑い時期でも夜は涼しくなって、寒暖差があっていいんです。おいしいぶどうができるんですよ」
夜間の気温が低いと、ぶどうが日中に蓄えた養分を浪費せず、おいしさを逃すことなく成長するといいます。昼夜の寒暖差は15~20度あるときも。
「ぶどうを栽培するうえで、一番大事なのは天気です。日照量と適温、適度な雨量です。あとは摘粒作業も大事です。JA中野市ではひと粒を大きく、甘くするため、ひと房35粒というルールで粒を減らして育てます。ぱっと見て、35粒がわかるようになるんですよ。糖度は19度以上※と決まっていて、どの生産者のぶどうもおいしくなるよう栽培しています」
JA中野市では、7月に35粒で育てているかを、9月には糖度が基準以上あるか、技術員による2回の一斉点検をへて、収穫時期を決定しています。
「天気が相手の仕事です。完璧に仕事をしても完璧にいかないことはよくあります。だから、“なるようになる”という気持ちも持ちつつ仕事をしています。
『こんなにおいしいぶどう、食べたことない!』という言葉をいただくと本当にうれしいですね。私たちは、食べてくださる組合員の皆さんの姿を直接見ることはないですが、いつも食べてくださる方々のことを思いながら作っています。
生産者一人ひとりが、どうしたらおいしいシャインマスカットができるのかを、考えて考えて考え抜いて生産しています。これからも、組合員の皆さんの期待に応えられるものを作っていけたらいいなと思っています」そう下田さんは、作業の合間に話してくれました。
※JA中野市の基準。長野県の基準は18度。また都道府県によって独自の設定があるため基準は異なります
露地で6月上旬頃に行われる房切りの様子。自然な状態では小さな蕾がびっしりつきますが(写真A)、それを手で取って減らし実となる部分を残します(写真B)。
ぶどうの木にまんべんなく光が当たるように、混み入っている葉がある場合は落とします(写真C)。実が成長してきたら袋掛けをして育てます(写真D)。同じ土地でもハウスの場合、露地よりも早く成長していました(写真E)。特別に、ハウス内で育っているぶどうの袋を開けて見せてもらいました(写真F)。
前年に収穫した後の枝を切って、整えます。
芽が出て枝が伸びてきたら、収穫線(ぶどう棚)に沿わせて方向付け(誘引)します。
葉が成長してきたらさらに誘引して、全体に太陽の光が当たりやすいように混み入っている箇所の葉を落とします。
蕾がついたら、開花直前に蕾の数を減らす房切りをします。そして花が咲きます。
ジベレリンという植物ホルモンでの処理を2度(10日間空けて)します。種無しぶどうにし、実を大きくする効果があります。並行して摘粒作業をし、35粒にそろえて房の大きさを同じにします。7月になると、JA中野市の技術員が各生産者の畑を回って、粒の数を確認していきます。
ぶどうの日焼けと鳥害防止のために、袋掛けや笠掛けをします。
9月、JA中野市の技術員が糖度の検査をします。ぶどうは一番先が甘くないため、この部分を取って糖度計で検査をし、糖度19度を超えていれば、他の粒も糖度は十分あることになり、収穫開始日が決定します。収穫は、ハサミで一つ一つ切る手作業です。
収穫箱に入れられたぶどうは、集出荷センターに出荷され、重さによって選別・箱詰めされてコープに届きます。
【広報誌2022年9月号より】