

カニカマは、ズワイガニが多く水揚げされる石川県で生まれました。
発祥の地には、先駆者としてのプライドを胸に、こだわって製造に取り組む人々がいました。
ふっくらジューシーな食感とうまみ、口に入れたときのほぐれ具合。「CO・OP蟹足風カニカマ」は、「味も見た目も本物のカニみたい」と評判の商品です。手掛けているのは、主にちくわやかまぼこなどの魚肉練り製品を作っている株式会社スギヨ(石川県七尾市)。1972年にカニカマを初めて世に送り出したメーカーです。
「発明した企業としてのプライドがあり、新商品は必ず社長が試食します。厳しくてなかなかOKが出ません」と話すのは、カニカマ製造に携わって22年という工場長の村中健介さん。
「この商品は、いかに本物のカニに近づけるかにこだわって作りました。目指したのは、この地域で“香箱ガニ”と呼ばれる、雌のズワイガニのむき身。北陸の冬の味覚で、雄よりも小さいですが繊細で優しい味わいが特長です。この香箱ガニを、細部まで本物そっくりにこだわって再現しました」
まだらに着色するなど、見た目も本物っぽさを追求。色合いや形もあえて1本1本そろえていません。「スーパーの水産コーナーでも、本物のカニの色や形を確認せずにはいられません」と村中さんは笑います。
株式会社スギヨ 製造本部 団地工場 工場長 村中健介さん
カニの成分を研究し、原材料にはうま味が近いスケソウダラのすり身を使用。水揚げ後すぐに船上で加工した、アメリカ産のすり身を使っています。
「質の低いすり身を使うと、薄く伸ばしたときに破れたり、細かく切断できなかったりして製品になりません。カニの身のような白さを出すためにも、鮮度の高いすり身を使う必要があります」
製造する上で難しいのは、ジューシー感と弾力の両立。水分量が多いとやわらかすぎて切断しにくいため、原材料の状態を見極め細かく温度を調整します。また加熱殺菌時には特有の加熱臭が付かないよう、しっかり殺菌できて風味も損なわない温度と加熱時間を割り出しました。
「ここを工夫したことで、カニのむき身のような香りを出しつつ、21日と長い賞味期間を実現できました」
村中さんの定番の食べ方は、きゅうりとわかめとあえた酢の物。
「寒い時期なら、しゃぶしゃぶもおすすめです。温めるとふわっとした食感を楽しめますよ。チーズと一緒にあぶった焼きガニ風もおいしいです」
能登半島地震で被災した工場は、約3カ月間の生産停止を経て復旧。地域の復興を後押ししているカニカマを、そのままはもちろん、いろいろな料理で楽しんでみては?
スケソウダラの冷凍すり身を、混ぜやすい大きさに砕きます(写真A)。特殊な機械で解凍しながら細かく切断、塩を加え、練って弾力を出します。卵白、でんぷん水、調味料などを加え、空気を抜きながら練り上げます(B)。

弾力が出たすり身を裏ごし機に投入し、目の細かい網(写真C)を通して黒皮や小骨などを除きます。厚さ1mm程のシート状に伸ばし、加熱して固めます(D)。

縦に細く切れ目を入れ、巻いてから(写真E)、切断。本物のカニのような繊維感とほぐれやすさを再現しています。トマトとパプリカ由来の着色料で着色し、蒸し上げます(F)。

十分に冷ましてから、目視検品しながらパックに5本ずつ入れ(写真G)、真空包装します。色の濃淡や包装状態、異物などの検査を行い、加熱殺菌。冷却して箱詰めし、出荷します(H)。

【広報誌2026年1月号より】