持続可能な社会をつくるエシカル消費
根本コープデリグループはエシカル消費にも力を入れておられますよね。作り手の人権、環境に配慮したものを買って、それを暮らしの豊かさにつなげる。私は買い物は楽しいことだと思います。その楽しさを作り手あるいは流通に携わる方々の幸せにもつなげることができるのはエシカル消費のすばらしさです。
熊﨑エシカルのお話をいただいたので、コープデリグループの取り組みを紹介させてください。1つは産直米の産地、新潟県佐渡市で2010年にスタートした「佐渡トキ応援お米プロジェクト」です。「CO・OP産直新潟佐渡コシヒカリ」と、その加工品の売り上げの一部を「佐渡市トキ環境整備基金」に寄付し、トキやさまざまな生きものと共生する環境にやさしい農業を応援しています。ほかにももずくの売り上げの一部を、沖縄県伊平屋村の「美ら島応援基金」に寄付する「美ら島応援もずくプロジェクト」もあります。これらは商品の利用を通して、持続可能な農業や水産業を応援することができます。

根本生協は一つのメディアだと私は思っているんです。背景にある生産者の物語だったり、地域にもたらす効果の話であったり、組合員の皆さんはそういうことを知って、対価である商品代金を支払います。
田んぼを耕作放棄地にしないために飼料用米を栽培し、豚の餌にする事業もされていますね。
熊﨑2008年から取り組む「お米育ち豚プロジェクト」です。飼料用米を栽培し、餌に15%以上配合して豚を育てています。肉にはほのかな甘みがあり、味もいいと評判です。
根本ストーリー性だけではなく、おいしさも大切ですよね。
熊﨑もちろんです。おいしくないと利用していただけません。飼料用米の生産者、配合飼料の製造会社、集荷業者などさまざまな人たちが携わり、組合員が利用し、また次の豚を育てる循環型のしくみが完成しています。
根本農業を下支えし、次につなげる意義のある取り組みですね。
熊﨑北海道・足寄(あしょろ)町で「産直はなゆき農場有機牛」という持続可能な畜産業にもチャレンジしています。有機牛の生産は飼育条件、飼料、健康管理など厳しい有機JAS基準があり、新たにはじめるには生産者の負担がとても大きい。コープデリグループは預託という形で、子牛を買い取り、預託料をお支払いし、生産者が牛の肥育に専念できるよう支援しています。成長した牛は優先的にコープデリグループに出荷され、組合員に販売する取り組みです。
根本その牧場では何頭くらいの牛を飼育されているのですか。
熊﨑すでに60頭になっています。埼玉県出身の若手女性生産者が、このはなゆき農場の代表として取り組んでいます。若手生産者を支援することで日本の畜産業を応援し、環境にもやさしい飼育をする一石三鳥ぐらいの取り組みです。
根本女性支援にもつながるすばらしい取り組みですね。

熊﨑コープデリグループではエシカル消費に対応した商品を2030年までに全商品の20%にすることが目標です。開始した2019年には10%でしたが、23年までで16%に達しました。あと一息、ぜひ達成させたいと思います。
根本サスティナビリティは我慢ではなくて生活を豊かにしてくれるものだと受け止めていただきたいです。その意味では情報を発信するメディアが、大切なパートナーになります。国連にはSDGsに熱心に取り組む世界のメディアとの連携の枠組みがあります。約400社が参加していますがそのうち220社が日本のメディアです。SDGsが社会にこれだけ浸透したのも、メディアが多様なキャンペーンをしてくださったおかげです。私たちにとってはメディアは情報を発信し、人を巻き込む上で非常に重要です。これだけ高まっているSDGsへの関心をテコにして、メディアの力で多くの人を巻き込み、この危機を乗り越えたいと考えております。
熊﨑さきほどの「個人でできる10の行動」にも電気自動車への乗り換えなど、気候変動対策のために理解と覚悟が必要なことも書かれていますね。
根本気候変動は、多くの人に大きな影響を与えています。生産者が作物をつくり続けられなくなるなどの影響もありますか。
熊﨑さまざまな影響があります。猛暑や豪雨による農産物の産地適性の変化や農家の対策への負担増加、そして不作は価格高騰に繋がり、更には国産品が手に入らなくなる未来も考えられます。気候変動による産地の変化を、組合員にしっかり伝えていくことも、生産者を守ることにつながりますので、意識的に取り組んでいかなければと考えています。
