人と人 つながりの物語 コープデリグループの組合員数は約520万人。組合員の皆さんの数だけ、物語がある。その物語を毎月一つお届けしていきます。描いているのは皆さんのくらしとコープデリの接点。あなたの物語はどんな物語ですか。人と人 つながりの物語

エピソード23母の教えを

2022年4月21日 UP

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エピソード23のイラスト

コープみらいの買い物手段は宅配と店舗。お店が家の近くにあれば、日常的に店舗で買い物をする人たちもいる。

東京都世田谷区で暮らす佳子よしこさんは、1940年生まれの81歳。1984年からその町で暮らし、翌85年から組合員として近所の店舗を利用してきた。2021年夏、その店が閉店の日を迎え、最後の買い物を楽しんだ。

「以前は毎日、7年前に圧迫骨折をしてからは週に一度、夫とお買い物に出かけるのが私の楽しみでした。コープさんは品物が確かなんですよ。なかでもお野菜が新鮮で甘味があって『野菜の味』がする。棚は高すぎず、お店の人はやさしくて、とても家庭的でどこのスーパーよりも良かったです。個性的な店員さんもいて『ちゃんとお料理していてえらい』なんてほめていただいたこともあったんですよ。閉店は涙が出るほどつらかった」と語る。

これまでの彼女の料理のルールは、素材を自分の目で確かめて買うことだった。

エピソード23のイラスト

佳子さんが台所に立つようになったのは15歳の頃。

「私は7人きょうだいで埼玉県の生まれ。姉2人は早く結婚して、兄と弟3人に父、男が多いから食事を作るのも大変で、中学3年から母の夕飯づくりの手伝いを始めたんです。母には『食事には必ず、海のものと山のものを入れなさい』って言われたの。山のものっていうのは、根菜類なんかね。あとは、旬のものを食べれば体に良いって。かたよらずにいろいろなものを食べなさいって」

66年台所に立ち続け、守り続けるのは母からの教えだ。

「人間の生活には衣・食・住があるけれど、『ぼろは着てても心は錦』って言うじゃない?住まいも雨風がしのげればいいんじゃないかなって。食が一番大切だって。
けんちん汁やとんかつなんかをよく作った。まぐろも必ず付けていて早い者勝ちですよ。お米は1度に1升。男の子って本当によく食べるのよね」


ごぼうやれんこん、こんにゃくはあく抜きしたほうがおいしいし、さといもは皮をむくのが大変だが、手をかければ料理がおいしくなる。料理に向き合う姿勢は今も変わらない。

「近頃、テレビでお料理番組を見ていてもすごく『簡単』を強調していて悲しい気持ちになるの。忙しい人が増えたとは思うけれど、日本独自の食文化を伝えていきたいですよね。

どんな人も食事に気をつけていれば今日明日ではないかもしれないけれど、元気になるんじゃないかって信じているんですよね。本当に少しずつね。その『食』に携わるお仕事をしているコープの職員さんは、誇りに思っていいと思います。

閉店は残念だったけど、私はコープの宅配も利用していて、担当さんは実直な印象の男性。届いたらすぐにカタログを見ます。改めてカタログをじっくり見て、お店で直接買い物する楽しさとは別の楽しさがあるって思います。お店にはないものや便利なものがありますよ。なんだか1週間たつのが早くて、カタログを捨てるのももったいないのよね」と笑顔で話す。

佳子さんが語ったお気に入りの食材、お気に入りの調味料、お気に入りの料理、そしてお気に入りのお店。「食生活」とは、この「お気に入り」を増やしていく作業なのかもしれない。

“私たちの身体は、私たちが食べたものでできている”これが60年以上台所に立ち続けて、佳子さんが見つけた答えだ。

illustration:Maiko Dake

※このお話は、実際にあったコープに関わる人と人との交流を取材し、物語にしています。登場する人物の名前は仮名の場合があります。

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