エピソード22“おたがいさま”の意味
2022年3月17日 UP
千葉県在住で90歳の女性からコープへの手紙。その一部を紹介する。〈家の周りの雑草に毎日悩みながらなすすべもなく日々を送っておりましたが、今回コープさんに助けられ、明るい笑顔に救われました。駐車場の草刈りをしてくださった。思い出すと心が明るくなります。ありがとうございました〉
1977年からコープの宅配を利用し、初めてコープの「おたがいさま」を利用した後の感謝の便りだった。「おたがいさま」※1とは、「くらしのたすけあいの会」の千葉県での呼称。くらしの中で誰かの手を借りたいと思った「利用者」と、有償ボランティアの「応援者」(組合員同士)による助け合いだ。女性宅へ行ったのが、同じ県内に暮らす
「この方はニコニコと『こんなに早く来てくださったの?』っておっしゃっていました。コーディネーター※2さんと2人で行ったんですけど、『いろんなことをお2人にお願いしたいわ』って」と幸子さんは話す。
幸子さんが初めてコープのお店に行ったのはおよそ30年前。当時はメダル※3がないとお店に入れず、自分のメダルを作ってもらったときはうれしかった。
「夫と子ども3人の5人家族で、当時『おかえりなさい』って子どもたちに言いたくて、家での仕事を選んだんです」
家で23年間、受注のエプロン作りを中心に縫製の仕事をした。並行して「おたがいさま」の応援者として活動も始めた。
「一番最初は子育て支援。コープの試食会に来た組合員の皆さんのお子さんを見るんです。コープの職員さんがやさしく教えてくださったから対応できました」
幸子さんはその後も、食事づくりの手伝い、家の中のそうじ、音楽会や博物館・美術館などへ出かけたい人の同伴、洋服のお直しなどの依頼にも応えてきた。
「『おたがいさま』は私にとって社交の場でもあるんです。ある足が不自由な方のお宅へ行くときには、うちにある花をちょっと摘んでいって生けるんです。利用者さんがそれを『何のお花?』って話が広がって。家族みんなで撮った写真をくださったりして。おそうじなのか、おしゃべりとお茶なのかっていう感じなんですよ。皆さん本当にニコニコして話してくださるので、それが一番うれしいですよね」と幸子さんは楽しそうに話す。作業が終わると達成感に満たされ、またお願いしてもらえるとうれしい。「この達成感を与えてくれる、『おたがいさま』が大好き! っていつも思います」一緒に活動してきた仲間も、コーディネーターさんとももう友達だ。
「人のために役に立ちたい。皆さんそういう気持ちってありますよね。老いていく父母を見て、年を取って困ることがあるだろうなと思った。困っている人を放っておきたくないんです。話を聞いて助けてあげたい。これまでたくさんの方に出会えて、本当に人と人の出会いっていいなって思います。誰かのための活動ではなく、『おたがいさま』は自分のための活動だと思います」
幸子さんはやさしい笑顔で「身内じゃないからこそ頼めることがあるんです。だからいつかきっと、自分も『おたがいさま』を頼むと思います」と語った。
誰かを助けることが自分も救ってくれる。幸子さんの生き方がそれを教えてくれる。
※1・2 くらしのたすけあいの会の呼称は地域、生協によって異なります。また、コーディネーターは、利用する方と応援・援助活動をする方をつなげます(二者をつなげる役割の組合員です)
※3 当時、幸子さんが住んでいた地域ではメダルが組合員証でした
illustration:Maiko Dake
※このお話は、実際にあったコープに関わる人と人との交流を取材し、物語にしています。登場する人物の名前は仮名の場合があります。
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