エピソード910年後の私のために
2020年12月17日 UP
ベトナム・ハノイ出身のアンさんは20歳。株式会社コープデリフーズ 大宮デリカセンターで、2019年4月から※外国人技能実習生2期生として、きんぴらごぼうや切り干し大根など、コープのお店で販売する和食の惣菜を作る実習(研修)をしている。技能実習の期間は3年間。アンさんは2022年3月まで一度も帰国せず学ぶ予定だ。
高校で日本語を学び、卒業後ベトナム国内の惣菜工場に就職した。そして、半年間寮に入り外国人技能実習生として準備・学習。来日後1カ月間日本での生活について学んでから実習生として今の生活を始めた。
「毎日が楽しいです。1期生として1年早く来日した先輩たちがとても優しくて、熱心に作業の手順を教えてくれました」
自宅は大宮デリカセンターから自転車で10分のアパート。実習生4人でルームシェアしている。夕食を食べた後に必ず日本語を勉強し、勉強した言葉は実習中に使ってみる。
まだまだ日本人が普通に話している言葉は全部はわからない。「つ」の発音がむずかしい。ときどき故郷を思って寂しい。けれど、そんなときは家族に電話する。ハノイで暮らす父や母、姉・弟となんてことない笑い話をする。
※日本の企業などで外国人を受け入れ、日本の企業などで外国人を受け入れ、働きながら習得した技術や知識を母国の発展に生かしてもらうことを目的とした制度。コープデリグループでは、株式会社コープデリフーズと、コープみらいのお店で実施しています
アンさんは5歳のとき、テレビで日本を見て大好きになった。通訳という仕事があることも知った。─「通訳」っていう職業の人がいれば、違う言葉を話す人同士でも話ができるんだ!
─彼女はそれから、いつか母国と日本をつなぐ通訳者を目指そうと決めている。
「通訳は言葉のかけ橋。人と人をつなぐ魔法のようなもので、国や民族同士の関係を良くするのに役立つ仕事です。技能実習が満了してベトナムに戻った後は、日本で学んだことを生かし惣菜工場で働きながら、日本語を勉強し続けたい。そして、いつかは通訳の仕事もしたい」
ゆっくりと言葉を選びながら話すアンさん。
「2020年、私は20 歳になりました。自分の未来を考えて、10 年後を想像したとき、やりたいことができる自分でありたい。夢は必ず叶うものではないということはわかっているけれど、目標に向かって努力を続ければ、きっとなりたい自分になれる。そう思って毎日、勉強しています」
アンさんは自分の夢を叶えて木工家具職人の父をはじめとした家族と、故郷の未来をより豊かにする一助になりたいと考えている。
「本当は6月に3期生の後輩たちがベトナムから来日する予定でした。でもコロナ禍で延期になって、やっともうすぐ来る予定なんです。そうしたら先輩たちが私に日本での惣菜の作り方や日本語の読み方を教えてくれたように、私も後輩たちに優しくして作業や日本語を教えてあげたい。それってなんだか通訳の仕事みたいでしょ」満面の笑顔と、キラキラしたまなざしでアンさんは言った。
母国に戻る前に、京都と大阪と沖縄と北海道を旅してみたい。そして、その旅行でたくさん日本語を使って話してみたい。
10年後の自分のために、アンさんは今を生きている。そしてアンさんの生きざまは私たちに語りかけている。─あなたは、なりたい自分のために今を生きていますか─ と。
illustration:Maiko Dake
※このお話は、実際にあったコープに関わる人と人との交流を取材し、物語にしています。登場する人物の名前は仮名です。
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