エピソード30カウンターからの景色
2022年12月15日 UP

「私はとてもコープが好き。サービスカウンターにいるのですが、いつも中で待っているのではなく、サッカー台※あたりで買い物かごの整理をしたりしながら、組合員の皆さんとお話しするんです。もともとはとても人見知りで、初めてお目にかかる組合員さんとお話しするのは今でもドキドキしますが、やっと慣れたんです。誰とでも話ができるようになったのはこの仕事のおかげなんですよ」
登さんは組合員の皆さんに、会話を通して“共済の人”だと知ってもらい、「よかったらお持ちになりませんか?」と心を込めてパンフレットをお渡ししている。
今から10年前、まだ小学生だった“なっちゃん”と初めて会話したのも、来店する組合員さんのお子さんだったからだ。なっちゃんは、家族と一緒に店へ買い物に来た。
「登さんおはよう!」「今日は誰と来たの?」そんな会話から始まり、いつも顔を見せてくれた。
登さんがカウンターでパンフレットに挟むおりがみを折っていると「手伝ってあげる!」と言って一緒になって折ってくれたなっちゃん。とても器用な子だった。「私、踊れるんだよ」と習っているクラシックバレエの話をしてくれたこともある。
「本当にかわいくって。あるときは『私ね、今度お姉ちゃんになるの』と弟が生まれることを大事そうに話してくれ、『生まれたの、すっごくかわいいの!』と、本当にうれしそうに笑っていました。おばあちゃんもやってきて、なっちゃんが弟さんのことを作文に書いて賞を取ったことを教えてくれました」
少しずつ成長していくなっちゃんは、決まって「のーぼりーさーん」とやってきた。「コープが大好きだから自分用のポイントカードを作りたい」と相談に来たこともあった。
登さんは“この子はどんな大人になるのかな?将来どんな仕事に就くのかな?”と思いながら見てきた。高校生になったなっちゃんは、あるときレジ担当のアルバイトとして店に入ってきた。

登さんはいう。
「なっちゃんがこれから大人になっていくうえで、“働く”ということを考えたのでしょうね。ご両親もコープなら安心って思ったみたい。働き始めても変わらず『登さん』って呼んでくれます。レジのアルバイトを経験したことで、きっとこの先に自分が何をやりたいのかヒントになるんじゃないかな。今の社会、つらいこともたくさんあるけれど、彼女が楽しく生きていけるといいなって思います」
そして、優しい笑顔でこう続けた。
「コープが世代を超えて愛され続けているところを見られるのもうれしい。長くここにいるからこそ、なっちゃんの成長も見ることができたと思うんです。
何か心配ごとや相談したいことがあるから、立ち寄ってくださる組合員さんも多いです。だから、少し元気になって帰ってもらえたらいいなって思っています」
登さんは自分の経験から、心を割って話すと助けてくれる人が現れる、だから話をすることが大切だと知っている。今日も登さんはあたたかなまなざしで、カウンターに立っている。
※購入した商品を買い物袋に詰める台
illustration:Maiko Dake
※このお話は、実際にあったコープに関わる人と人との交流を取材し、物語にしています。登場する人物の名前は仮名の場合があります。
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