人と人 つながりの物語 コープデリグループの組合員数は約500万人。組合員の皆さんの数だけ、物語がある。その物語を毎月一つお届けしていきます。描いているのは皆さんのくらしとコープデリの接点。あなたの物語はどんな物語ですか。人と人 つながりの物語

エピソード19小さなパンに思いを込めて

2021年11月18日 UP

Facebookシェアボタン
エピソード19のイラスト

コロナ禍以前、コープみらい店舗のベーカリー(パン売り場)は、イートインスペース※1が併設された小さな“文化の場所”だった。草地美保さんは埼玉県入間市のコープみらい コープ武蔵藤沢店に勤めるベテラン職員。彼女は言う。
「コロナ禍以前は、近隣のスポーツクラブに通うお客さまがコーヒーとパンを召し上がったり、週末には小さなお子さんがスイミングクラブの帰りに親御さんと立ち寄って、“進級テストをがんばったご褒美”って好きなパンを買ってもらって、おいしそうに食べたりしていました」

草地さんはそんな光景を見るのが好きだった。
「パンは焼き立てが一番おいしい。以前はパンが焼けると『焼き立てですー!』って販売していたけれど、感染症対策で現在は焼き立てを冷めた鉄板に移して冷ましてから、ビニール袋に入れて販売しています。焼き立てをお出しできないのが残念です。でも、いつも来てくださる組合員さんに、『あのパンできてる?』と言われたときは紙袋に入れて焼き立てをお渡しできることもあります」


草地さんのパン作りの歴史は古い。38年前に結婚、3人の子を持つ母親になった。「子どもたちのおやつを手作りしたかった」。それでパン教室に通い、家でたくさんのパンやお菓子を焼いた。「パンって生き物なので、面白いんですよ」。草地さんは目を輝かせる。

子どもたちに手がかからなくなった16年前、パン作りを仕事にしたいと、武蔵藤沢店で働き始めた。

そしてこの春、コープデリグループの店舗事業※2で「紙焼きブレッド レシピコンテスト」が行われ、店舗のベーカリーで働く職員たちから約90の応募があった。紙の型に入れて焼く、ホテルブレッドをアレンジしたパンだ。2つのパンが「特選」に選ばれ、期間限定商品として各店舗のベーカリーで販売された。

草地さんはそのひとつ「フランクとタルタルソースブレッド」を考案した。店長に試食してもらって応募を決めた。濃厚なフランクフルトにタルタルソースのさっぱりした酸味が絶妙なバランスの、これまでにないパンだった。

「販売前は売れるだろうかって緊張しましたが、食べてくださって『おいしかったよ』とか『子どももおいしいって食べてくれました』って声をかけてもらってうれしかったですね」と草地さんは話す。

エピソード19のイラスト

彼女は仕事場から帰宅する途中、必ず他店のパン屋に立ち寄ることを習慣にしている。

「毎日見ていると、毎日違うんです。違いを見るのが私の楽しみ。かわいいとかきれいって驚いたり感動したりする気づきが、自分の中に毎日少しずつ蓄積している感じで、新しいパンのアイデアも思いつきます。私のモットーは、“毎日を楽しむこと”。仕事は大変。でも、そう言っているだけでは、進歩も進化もない。0を自分で1にしていくことが大事。なんでも少しずつ毎日やって、自分の好きなことを学び続けています。自分の楽しい気持ちをお客さまにも味わってもらえたらいいなと思って毎日仕事をしています」

彼女はそう言って笑った。

草地さんが生み出したパンは期間限定販売でもう食べられないが、ベーカリーには今後も職員考案のオリジナル商品が並ぶ予定だ。

草地さんの文化の場、イートインスペースもコロナ後の開放のときを待っている。

※1 コロナ禍により2021年10月現在は休止中

※2 一部店舗のない生協・地域もあります。またベーカリーがあるのは大型店舗です

illustration:Maiko Dake

※このお話は、実際にあったコープに関わる人と人との交流を取材し、物語にしています。登場する人物の名前は仮名の場合があります。

こちらも読んでみる

人と人 つながりの物語

職員との心に残る出来事を随時募集しています。

エピソードを送る