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若手生産者インタビュー1

【肉の加工】岩手畜産流通センター 近藤誠さん
【1】「すごい」と、「きれい」

―― ここで働いて何年目ですか? 最初どう感じましたか?

近藤さん:11年目になります。初めて塊の肉を見たときは、すごい、と思いました。それに現場はすごくきれいで、イメージとはぜんぜん違ってました。

―― 今はどんな仕事ですか?

近藤さん:豚の肩肉のカットをしています。半身の枝肉からブロック肉にしていく行程です。

―― どのように仕事を覚えていったのですか?

近藤さん:最初は、作業場の片隅に動かないテーブル(*)があって、そこで1頭・1頭を時間かけて練習しながら覚えてゆきます。
【注】作業の本ラインは、まな板素材でできている作業台が、ベルトコンベアのようにゆっくり動いて次の工程につながっていくつくりになっている。肉自体を持ち運ぶことをほとんど無くすことで、衛生・品質を維持しながら作業者の負担も減らすしくみ。

―― 一つの部位が満足にできるようになるまで、どのくらいかかるのでしょう?

近藤さん:今の作業ラインの作り方は「ワンウェイ」といって作業者が特定のポジションに固定されるので、少しづつ覚えるしかないんですが、全部覚えるには、2、3年はかけないといけないかも。
製造二課 課長 吉岡憲夫さん: 近藤君はどの部位もできる優秀なスタッフですね。初めの頃は、骨を持って家に帰らせました。とにかく骨を並べてみてイメージしないと、ナイフをきれいに入れることができない。
【2】 骨を知り、肉を斬る
課長:最初は指でなぞらせるんですよ。それからナイフを持たせて、イメージトレーニングが終わったら作業に入るんです。骨のしくみが頭に叩き込まれていないと、「きれいに、早く」作業をすることができないんです。生産側から言えば(骨に肉が残ってしまい、原料肉としての)歩留まりが悪くなる。
「衛生」、「品質」、「作業者の安全」が現場の基本で、これが問われます。「きれいに、早く」にこだわることで怪我も少なくなります。ただ単純にきれいに取るなら時間をかけるということですが、遅い作業の能率は悪く、かえって危険なんですよ。

―― どんな作業が難しいのですか?

近藤さん:加工工程の中では、骨を抜く作業が一番難しい。特に「きれいに、早く」はホント難しいです。
もちろんそれを考えながら作業するんですが、自分だけが早くてもいけない。後ろや前の工程も見ながら、タイミングを計ったり、作業をカバーしたりしないと全体がスムーズに流れていかないんです。
それに、これはイマイチ、これはうまくいった、これはキレイに抜けた、とか、個体一つ一つ常に違う。そのうまくいったイメージが指や体に残って、積み重なって、さらに次につなげていければと思っています。
【3】 痛さは、後からやってくる

―― ナイフを使うお仕事ですが、怪我をした経験はありますか? その足の怪我は?

(注:近藤さんは足を引きずってインタビューの場に現れていた)
近藤さん:まさに、それです(苦笑)。
怪我をしたその瞬間は、痛いではなく「ヤバイッ!」と思うんです。痛さは後からやって来る。
課長:大抵の工程ではナイフを外に向けて作業するんですが、このポジションでは、きれいに早く作業するには、ナイフを自分に向けて、刺すような動きをとる手順があります。そういう危険が付きまとうポジション。もちろん防具はつけるのですが、怪我をする時は、どういうわけだか、防具の端や隙間に刃が入ってしまうことがあります。逆に全面防具だと身軽に動けなくなりますし。

―― 今は豚肉担当ということですが、他の肉や工程へのローテーションはあるのですか?

課長:本当はローテーションで各工程の難しさを知れば、もっとフォローし合って作業ができるのでしょうが・・・。今の「ワンウェイ」方式の工程で、特に、近藤君のやっている、左側の肩肉加工の一番先頭というのは非常に難しいポジションなんです。人を入れ替えたくても、なかなかできない。
【4】 締まりがいい肉は、食べると柔らかい

―― 肩肉の塊は何kgくらいの重さになりますか?

近藤さん:前の工程から自分のポジションに受け取る時は、・・・20kgくらいですか。

―― そんなに。それで一日に何頭分くらい作業を?

近藤さん:今は一日700頭。肩だけですけど。(と言いながら、こともなげな口調)

―― えぇっ? 一人で700? 全部?

近藤さん:ええ。忙しい時期だと、作業は立ちっぱなしなので、正直、キツイですね。 課長:コープネットさん向けの肉は「SP規格」といって、筋を丁寧に取って整形し、スライスさえすればパックできるような、上位ランクの規格です。45秒に1頭、ゆっくり丁寧に加工する。ノーマル規格では35秒に1頭なんです。その平均が1時間75頭という数字になります。

―― 「お米そだちのみのりぶた」だとわかって作業しているのですか?

近藤さん:作業に区切りがありますし、次は何の肉が作業ラインを流れてくるか、わかります。

―― 他の豚との違いを何か感じますか?

近藤さん:肉の締まりがいい、と感じますね。

―― 締まりがいいというのは、どういう状態ですか? 食感と何か関係があるんですか?

近藤さん:脂分が肉の繊維の中にほどよく霜降りのように入っている。だから、一般的に言って柔らかくおいしい肉だと思います。
課長:作業現場から見れば、刃が入りにくく、やりにくい。でも肉質から見れば、良い肉だといえます。
【5】 消費者の声を、ぜひ現場にも伝えたい

―― 豚や牛がと畜され、解体され、肉の部位ごとになっていくわけですが、どんな思い、気持ちを持っていらっしゃいますか?

課長:この、組合員さんの感想(*)の通りだと思います。
と畜は、肉食文化の宿命だと思います。キツイ、キタナイといったイメージはあるかも知れませんが、様々な過程を経てはじめて口に入るんだということを伝えられれば。見学に来ても普通はと畜の過程はお見せしません。子どもたちには解体工程も見せないでくれという学校もあります。個人的には、と畜も小さい子どもたちにだって説明して、キチンと見せることがあってもいいかな、と思いますよ。

―― 生協の組合員さんに向けて、メッセージは。

課長:私らは直接消費者の声を聞けることは少ないから、声をいただくとありがたい。
近藤さん:消費者の声を、ぜひ現場に伝えたいです。
管理役 佐々木光広さん:豚だけで日本で年間7万トン位消費されています。輸入肉もあるし、シュウマイなどに加工される肉も多い。肉は食になくてはならないものです。そのために、我々だけでなく多くの人々の努力で作られていることを消費者の皆様にも知っていただければと思います。
【注】インタビューするにあたり、以前見学した組合員さんの感想をいくつか持参し見ていただきました。次のようなものです。
●肉を解体していく作業は、息をのむような包丁さばきでした。命ときちんと向き合うことで得るプライドと強いプロの精神力を感じました。頭が下がる思いでした。
●命を絶ち、骨を抜き取り、食べるまでにしてくれる人がいて、私は肉を食べている。私は牛や豚の命をいただき、肉を食べさせてもらっているんだと思い知らされました。
●私たちは生命をいただいているのですからきちんと感謝し、おいしく、残さず食べてあげることが努めだと思いました。
*組合員と生産者のつながりについては、こちらもご覧ください。
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【番外編】

―― 食べるものとしては、何が好き?

近藤さん:肉も好きですけど、魚が好きです。趣味が釣りなんで。

―― どんな料理が食卓にのぼります?

近藤さん:レンジでチンが多いかも。
親と同居なので、魚が釣れた時は、たまには食材として出します。釣れないときは黙~ってますね(笑)。

―― 彼女は?

近藤さん:いないですね。
課長:仕事の鬼だから・・・(笑)
近藤さん:いやあ、そんなことは(笑)
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