なるほど!食卓の安全学

天然だからいい、は本当?

食品の安全性は、科学的なデータに基づき判断

合成? 天然?どちらが安全?

 「天然だから、自然だから、安全・安心です」という言葉、よく聞きます。でも、落ち着いて考えてみると、天然物にも怖いものがたくさんあることに気付きますね。例えばフグ毒のテトロドトキシン。数ミリグラム食べたら死んでしまいます。数年前には、野生のキノコ、スギヒラタケによる食中毒が問題となりました。日本で発生する食中毒の原因の大半はこうした自然毒や微生物。人工的な化学物質が原因となる件数は例年、1%以下です。天然物の中には発がん性や慢性毒性を持つものも目立ちます。天然か人工合成かでは安全性は分からないのが実状です。
 食品添加物の中にも、人工合成品と天然物から抽出されたものがあります。天然添加物は、植物から抽出された着色料や微生物由来の保存料など、多種多様。消費者はやはり、天然添加物を好む傾向にあるようです。しかし、科学者の認識はまるで逆。「私なら、合成添加物が使われた食品を選びます」と言う人が多いのです。どうしてだと思いますか? それは、合成の添加物の方が警戒されたが故に、安全性を確認する試験が数多く行われ、さまざまな角度から検証されて、問題がないことを確認されたうえで認可されているからです。
 一方、天然物由来の添加物は、あまり詳しく調べられず使われてきました。「それではいけない」ということになり、1995年に法律が改正され、新規の添加物については人工、天然を問わず厳しい安全性評価を行って、問題がないものだけを認可する仕組みができました。しかし、それまで使われてきた天然添加物は、「長年使ってきたので大丈夫だろう」という判断の下、「既存添加物」という名称をつけられ、そのまま使用を認められたのです。
 食品安全委員会は、その一つ一つについて安全性を評価する作業を続けていますが、数が多いため、未評価のものがまだかなり残っています。科学者の多くは、物質が人工か天然かで区別するのでなく、「よく調べられて安全性が科学的に証明されているかどうか」で善し悪しを判断しているのです。
 次号では、物質の科学的な評価と判断がどのように行われているのかをお話します。

※食品安全委員会 食品を摂取することの健康への悪影響について、科学的知見に基づき評価を行う内閣府の機関

2007年に発生した食中毒の主な原因(厚生労働省まとめ)
原因物質
事件数
発生率
自然毒 植物性自然毒 74 5.7%
動物性自然毒 39 3.0%
細菌 サルモネラ属菌 126 9.8%
ブドウ球菌 70 5.4%
腸炎ビブリオ 42 3.3%
病原大腸菌 36 2.8%
カンピロバクター・ジェジュニ/コリ 416 32.3%
その他 42 3.3%
ウイルス ノロウイルス 344 26.7%
その他 4 0.3%
化学物質   10 0.8%
その他・不明   86 6.7%
総計   1,289 -
松永和紀さんの写真
松永和紀(まつながわき)

京都大学大学院農学研究科修士課程修了(農芸化学専攻)。新聞社勤務を経てフリーの科学ライターに。著書に「メディア・バイアス あやしい健康情報とニセ科学」など。科学的根拠のある食情報を発信する消費者団体「フーコム」を4月に設立。FOOCOM.NETサイトへ

【広報誌2009年5月号より】

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